
「改善」と「改革」の大きな違い
先日、ネットに掲載されていたプレジデントの記事が気になっています。それは『完全復活!トヨタが挑んだ「働き方改革」の衝撃』というもの。その記事によると、トヨタ自動車では研究・開発の技術者と生産技術の技術者とが「パワートレーン共同開発棟」で共に働くようになったことを、「働き方改革」と位置付けているそうなのです。縦割りから横軸へと変革を実践したことで、トヨタ自動車はさらなる大躍進へとステップアップしています。
トヨタ自動車ほどの大企業がこれほどの改革に踏み出すには、相当の覚悟と努力が必要だったに違いありません。それとも大企業だからこそ、必要な手を迅速に打つことができたのでしょうか。
改善ではなく改革に踏み出す勇気を
まずは似て非なる「改善」と「改革」の違いから確認してみましょう。「改善」というのは現状肯定の観点から改良を加えること、「改革」というのは現状を否定することから始めて新たな世界を切り開くことになります。
例えば、従来の事業モデルを変えることなく、拡販やコストダウンの方法を改良した場合には改善を行ったことになります。一方で事業モデル自体の見直しに伴う拡販やコストダウンは、改革の一環であるといえます。
改善と改革の大きな違いは現状認識の違いにあります。改善は現状を肯定し、その良いところを最大限に伸ばそうと手直しを加えることであり、組織の根本的な問題と向き合い、変えていこうという覚悟は含まれていません。そのためともすると本当の問題点を見失い、悪循環に陥ってしまう可能性があるのです。
組織にとって根本的な変化を目指す改革というものは、ときに大きな痛手を伴うものとなります。とはいえ、創造的破壊なくしては経済の進展は望めません。既存の組織が変革や革新を経て新たな世界に進出しようと望むのであれば、そこには強いリーダーシップが必要とされるのです。
変革に伴う痛みを恐れず、強い責任感と志向性を示すことのできる強いリーダーシップこそが創造的破壊を実現し、組織を新たな世界へと導くことができます。これまでのやり方が通用しなくなったと感じたとき、現状を肯定したまま改善を行うのか、それとも勇気を持って現状を否定することから始めてみるのか。経営者の英断が求められるのだと思います。