多様化するハラスメント
企業の人間関係に潜んでいるハラスメントは、社会問題として注目されています。ハラスメント(harassment)とは英語で「悩ませる」「苦しめる」という意味です。
ひとくちに「ハラスメント」と言っても、多種多様なタイプがあります。性的嫌がらせは「セクハラ」。職権・権力(パワー)を利用した「パワハラ」。研究現場での「アカハラ」など、近年さまざまなハラスメントが叫ばれるようになりました。
「不快」を与えた側は意図したものではなくとも、被害者が「不快」と感じればハラスメントになります。発見されにくく、対応に苦慮するのもハラスメントの特徴と言えるでしょう。
1.パワハラと認識される行為
職場は上司と部下、先輩と後輩などの上下関係の多い場所であることから、ハラスメントの中でもパワーハラスメントが起こりやすい環境といえます。
- 他のメンバーがいる前で、部下を過剰に叱責する
- 強制退職・異動などをちらつかせ、人事権を不当行使
- 酒の強要、無理難題を押し付け、部下の肉体的・精神的な健康を害する
- 部下を孤立させる・必要な情報を与えず業務の遂行をさまたげる、など
近年では様々な環境変化により、パワハラは上司から部下への嫌がらせだけではなく、部下から上司が受けたり、正社員から非正規社員への差別やいじめがあったり、多様化していると言えるでしょう。
また、正当な叱責であっても、相手に「不快」と受け取られるケースなど、標準的な基準がないため見極めが困難です。
2.パワハラがもたらすリスク
- 社員のモチベーション・業務効率の低下
- うつ病などメンタル不調による休職者の発生
- 休職者の発生による現存社員の労働過多
- 労働過多による健康被害、長期休職者・退職者のリスク
- 顧客へのサービスや売り上げの低下
- 被害者・加害者による訴訟問題・損害賠償リスク
- 企業イメージのダウン、風評被害
また、従業員たちがパワハラの状況を放置している企業への不信感を募らせることもあるでしょう。企業の宝ともいえる従業員の退職や自殺を引きおこし、事業の継続性まで問われる事まであるくらい、パワハラは様々な危険を秘めています。
3.パワハラへの対策
- 社内でパワハラについての知識・理解を深める
- 加害者の立場や地位に左右されず、確固とした対応をとる
- パワハラの芽を摘み、初期消火を進める
- ハラスメント対応・改善後の被害者ケアや環境パフォーマンス回復の土壌づくり
- アンケート調査などで社内の現状を確認、意識を高め予防・改善策を検討、実施していく
「コンプライアンス委員会」などの専門機関を設置する企業もあります。ハラスメントの危険が拡大、もしくは深刻化する前にその芽を摘み企業リスクを減らすことが大切です。