マイナンバーの実務への影響
マイナンバー制度がスタートして月日が過ぎ、制度が始まっているのに実務の方がまだ追いついていないといった会社もあるのではないでしょうか。そこで今回はマイナンバー制度のスタートによる実務への影響について、ご紹介してみたいと思います。
マイナンバー制度に関する実務
まず整理しておきたいのは、マイナンバーを取り扱う立場についてです。マイナンバーを取り扱う場合、「個人番号利用事務実施者」と「個人番号関係事務実施者」という2つの立場があります。
前者の「個人番号利用事務実施者」とは、マイナンバーを自らの業務で利用する立場であり、主に行政機関がこれにあたります。民間企業は後者の「個人番号関係事務実施者」にあたり、マイナンバーを自らのビジネスに利用するわけではなく、行政機関がマイナンバーを活用する際の補助的な役割を担うものとなります。
では民間企業としてマイナンバーに関わる実務とは、どのようなものになるのでしょうか。民間企業の実務としては社員のマイナンバーを取り扱う人事給与関係実務と、取引先のマイナンバーを取り扱う国税の法定調書関係実務があります。
人事給与関係実務とは、社員の給与や社会保険などに関連する実務です。所得税の源泉徴収、住民税の特別徴収、医療保険や介護保険、年金保険、労働保険といった社会保険料の支払いや届け出、申請などの業務がこれにあたります。
こうした業務のため、まずは社員とその家族分のマイナンバー情報を取得し、保管しなければなりません。マイナンバー情報を取得する際には本人確認が必要となりますし、またその保管については漏えい等を防止するための安全管理が義務付けられています。
それぞれの実務のスタート時期は以下のとおりです。
- 所得税については2016年12月の年末調整から
- 住民税については2017年1月分の給与支払報告書の提出から
- 健康保険・厚生年金保険の届け出は2017年1月の提出分から
国税の法定調書関係実務とは、法定資料の提出に関連する実務です。法定資料を提出する際にはマイナンバー情報や法人番号を記載する必要があります。そのため一時的な報酬や配当金を支払う相手についてもマイナンバーの告知を求めることになり、その管理をする必要もでてきます。配当金や剰余金分配の支払調書、給与所得や退職所得の源泉徴収票など、2016年の1月から実務を要するものもありますので留意しましょう。
このようなマイナンバーに関する実務を、遅滞や誤りなく取り扱うにはどうすれば良いのでしょうか。それにはまず社内にマイナンバーを取り扱う事務取扱担当者を置くことが重要。また事務範囲を明確化することや取扱規定の策定、安全管理策の検討と対策、従業員への教育などが必要となります。マイナンバー業務のサポートサービスや管理ソフトを活用することを検討してみるのも良いのではないでしょうか。