組織内のコミュニケーション課題解決
社会のさまざまな場面でコミュニケーション不足が問題視されるなか、近年増加傾向にあるビジネスパーソンの心の病も、コミュニケーションが不足していることがひとつの要因であるという調査結果がでているようです。日本生産性本部の調査によると、「心の病」が増加する傾向にある組織では、従業員の孤立化が進んでいることが判明。「個人で仕事をする機会が増えた」「職場でのコミュニケーションの機会が減った」といった回答をした企業ほど、心の病が増加している傾向にあるようなのです。
社内のコミュニケーションが不足することは従業員のモチベーションを低下させ、業績悪化にもつながります。ではどうすればコミュニケーションの課題を解決することができるのでしょうか?
職場のコミュニケーションを活性化するには
近年、企業内のコミュニケーション不足が深刻化しているのには、いくつかの要因が考えられます。まずひとつには、IT技術の進化によってメールや電話会議などでのやりとりが増え、同じ社内の人間であっても顔を合わせて話を交わすことが減っていることが挙げられます。また経営の効率化により社員旅行や運動会、各種親睦会といった社内交流の場が減っていること。こうしたことにより、社内におけるフォーマルなネットワークを構築する機会が少なくなっているのです。
人間関係を醸成するために昔から有効な手段とされてきた「飲み会」が減っていることや、「アルハラ」などに挙げられる「飲み会」の意義をはき違えたミスコミュニケーションによるマイナス効果なども大きな要因といえます。職場の問題点や愚痴などを話し合う機会が減っていること。これにより現代のビジネスパーソンはインフォーマルなネットワークを築く機会も逸しているのです。
コミュニケーションには「意思疎通や伝達」、「説得や説明」、「人間関係を円滑にするため」、そして「共感するため」といった4つの側面があります。伝達や説明などといった側面はメールなどで正確かつ迅速に行うことが適しているかもしれませんが、人間関係や共感といった側面においてはやはり顔と顔を合わせたコミュニケーションが重要になります。
そこでおすすめしたいのはフォーマルとインフォーマル双方のネットワークを構築しやすい環境作りをすること。例えばフォーマルネットワーク構築のため、事務所のパーテーションを取り払ったり、階数の違う部屋をまとめて一つの階に展開するなどして、社員が行き来しやすい環境を整えること。また社内サークルを作ったり、イベントを開催するなどして、インフォーマルネットワークを構築する機会を増やすことなど。トヨタ自動車では、食事会や同期会、同窓会といったさまざまなインフォーマルネットワークを介して、社内コミュニケーションの課題を改善する取り組みを行っているそうです。
ただ、いき過ぎた環境構築にはご注意を。強制をともなうものや距離感を逸したコミュニケーションは、さらなるモチベーションの低下につながるでしょう。現場の意見や、組織構造を把握したうえでの環境構築がのぞましいです。
しかし、社内コミュニケーションの課題を克服することは、情報を伝達し、意思疎通をはかるだけでなく、円滑な人間関係を醸成し、喜びや悔しさを共有できる強い組織にすることにつながります。マンパワーを最大限に発揮できる強い組織づくりを目指すなら、自社のコミュニケーション改善に取り組んでいただきたいと思います。