中小企業の海外進出
2016年1月、大阪府の松井知事はフィリピン政府との間で、大阪の中小企業のフィリピン進出を支援するための覚書を交わしました。この覚書にはフィリピン政府が大阪を担当する職員を配置し、事業立ち上げをサポートすることなどが盛り込まれているそうです。
これに先立ち住友商事が出資するフィリピンの工業団地と大阪府との間では、府内企業のフィリピンにおける事業展開を支援するための協定を締結することが合意されています。この協定とは、工業団地に新規入居する府内中小企業に特化したサポートを導入するといった内容となっているそうです。
自治体と工業団地が提携して、包括的なサポート体制をつくるのはフィリピンでも初の取り組み。今後、中小企業の海外進出の増加に伴い、このような取り組みはフィリピンや大阪府以外にも広がりを見せるのではないでしょうか。
いつ海外進出すべきなのか?
人口減少などによって国内市場に成長を求めるのは難しい日本。近年は新興国を含めた世界市場にチャンスを求める中小企業が増えています。
2015年に行われた海外へ進出している中小企業に関する調査によれば、進出国としてもっとも多いのは中国、ついでタイ。また今後進出予定のある国としてもっとも多かったのはベトナムとなっていました。また海外進出を果たした理由としてもっとも多かったのは「海外での需要増」、ついで「取引先企業の海外進出」となっていました。
多くの中小企業が海外への進出を果たしている背景には、インターネットの普及によって情報の入手や海外とのコミュニケーションが容易で安価になったことがあります。そのため宗教や法制度などの違いによるカントリーリスクに対しても、事前に準備することができるようになりました。
こうしうたことから中小企業の海外販路開拓へのハードルは、今がもっとも低くなっていると言えるのではないでしょうか。日本経済が低迷してしまうその前に打つべき手を打っておきたいのなら、いまこそが海外進出を果たすべきときなのかもしれません。
ただし海外に進出して成功をおさめるためには、さまざまな課題がつきもの。ここでは海外進出における課題をいくつかあげてみたいと思います。
もっとも大きな課題としては、人材確保の難しさがあげられます。
海外進出の際に必要な人材とは、現地の言語に長け、販路開拓や販売、回収、マーケティングなどの実務を任せられるスタッフです。さらに現地における組織づくりや人事管理、製品管理などのマネージメント業務もこなせる人材でなければなりません。多くの中小企業にとって、新規事業のためにそれだけの人材を確保するのは困難なものとなりそうです。
つぎに現地ニーズのマーケティングという課題もあります。
現地ニーズを調査し、自社の製品やサービスを如何にマッチさせるか。綿密なマーケティングのうえで明確な戦略を立てなければ、製品開発や組織的な取り組みを実行することはできません。
マーケティングの課題をクリアできなければ、原材料を輸出して他のすべての権利を現地企業に委譲するだけ・・・といった限定的なビジネスになってしまう恐れもあります。
ここまで中小企業の海外進出における課題をいくつかあげてきましたが、課題が大きければ大きいほど、それを克服したときのリターンも大きいもの。企業としての将来を展望するなら、志も高く、さまざまな課題を克服して未踏の大地を目指してみることも必要なのではないでしょうか。