
保険代理店業界の現状と、M&Aが活発な理由
保険代理店業界のM&Aが活発な理由とは?
業界の現状も解説
保険代理店業界ではM&Aが活発に行われています。M&Aの目的は、後継者問題の解決や競争力の強化などです。
本記事では、保険代理店業界のM&Aが活発な理由について、業界の現状を踏まえて詳しく解説します。
保険代理店業界の状況
保険代理店業界は、全体的に右肩下がりの状況にあります。その理由について詳しく解説します。
規制の厳格化
金融庁による保険代理店業界に対する規制が厳格化しつつあり、さらに大手生命保険会社の不祥事の影響で業界全体が右肩下がりの状況になります。
販売チャネルの多様化
現代では、保険代理店だけではなく銀行や郵便局でも保険商品を販売しています。また、インターネットがあれば店舗に行かずに保険に加入できます。
このような販売チャネルの多様化による競争激化が原因で、保険代理店のニーズが低下しつつあるのです。
保険会社による「売り止め」
金融庁の規制が厳格化しているとともに、販売チャネルの多様化によって保険代理店のニーズが低下しつつあるため、保険会社による「売り止め」が増加しています。
売り止めとは、業務内容に問題がある保険代理店から保険商品を販売する権利を剥奪する行為です。保険代理店は、非常に多くの保険商品を取り扱うため、商品の内容を把握しきれず、適切な販売ができないケースがあります。また、保険代理店が適切な対応ができないことで保険会社に顧客から問い合わせがあったり、クレームが入ったりするケースも少なくありません。
このような事態にある保険代理店を野放しにすると、保険会社の評判が落ちる可能性もあるため、売り止めを実施するのです。販売権を剥奪された保険代理店は、その保険会社の保険商品を販売できなくなります。
他社の保険商品で売上を補うことができれば問題ありませんが、保険代理店のニーズが低下しつつある中で、取り扱える保険商品の減少は死活問題です。
コンプライアンス対策への対応ができない
コンプライアンス違反が問題化している保険代理店業界では、保険会社が開催する販売研修を修了しなければ保険商品を販売できない場合があります。
このようなコンプライアンス対策への対応が難しいために、やむを得ず販売権を返還する保険代理店も少なくありません。
経営者の高齢化
保険代理店の経営者の年齢は50~70代が多く、世代交代の時期に突入しています。しかし、少子高齢化が進む現代では、後継者に相応しい人物が見つからず、やむを得ず廃業する保険代理店が多く存在します。
保険代理店におけるM&Aのメリット
保険代理店業界を取り巻く問題については、M&Aで解消できる可能性があります。M&Aの買い手と売り手それぞれのメリットについてご説明いたします。
買い手側のメリット
保険代理店を買収する側のメリットは、手数料による収益増加です。契約者が保険契約を継続している限り、保険会社から保険代理店へ7年間は手数料が支払われ続けます。手数料は保険料の割合で決まり、加入1年目は保険料の半分程度、2~7年目までは10%程度、それ以降は支払われないことが一般的です。
ただし、加入している限り永久的に手数料が支払われる保険商品もあります。このように、保険代理店を買収するだけで収益を容易に増やすことができるため、M&Aが活発化している背景の1つとなっています。ただし、保障の対象となる事象が起きた際は、保険金の給付審査や給付手続きなどが必要です。
人件費がかかるため、手数料が丸々利益になるわけではありませんが、トータルで見ても買収のメリットは大きいと言えるでしょう。
売り手側のメリット
保険代理店側のメリットは、売却益を得られることです。M&Aは、会社や事業を譲渡して、その対価を受け取ります。保険代理店の価値、将来性、取引先、顧客数、契約数などが優れているほどに売却価額も高くなります。
保険代理店のM&Aを検討する際のポイント
保険代理店の売却を検討する際は、その目的を明確化しましょう。後継者問題の解消、競争力の強化、リソースの確保、資金調達など、さまざまな目的でM&Aを行うことができます。
後継者問題であれば、信頼できる後継者であるかどうか見極めが必要です。競争力の強化が目的の場合は、シナジー効果(相乗効果)を得られるかどうか確認しなければなりません。
このように、目的に応じて必要な準備や買い手の選定方法が異なるため、目的は最初に設定しましょう。
まとめ
保険代理店業界ではM&Aが活発化しています。業界全体が右肩下がりである状況下では、顧客や契約数を増やすためにさまざまな施策の実施が欠かせません。M&Aで他社と合併すると業界内での競争力を高めることができます。
保険代理店業界で生き抜くために競争力を高めたい、撤退して他の事業に注力したい、後継者問題を解消したいという方はM&Aを検討してみてはいかがでしょうか。
公開日 | 2023年5月10日 |
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制作協力 | 加藤 良大 |