企業再生は人の再生
不振の続いたアップルジャパンをV字回復へと導き、日本マクドナルドを8年連続売上プラス成長へと導いてきた原田泳幸氏。現在、ベネッセホールディングスの会長兼社長として、就任1カ月で起きた個人情報流出という事故への対応とベネッセ事業の再建を目指し、奮闘しています。
原田氏はベネッセホールディングスの社長就任後すぐに組織・人事の構造改革に着手。ビジネスに対する姿勢や組織風土の変革を目指してきました。ベネッセの価値は教材ではなく、ノウハウを持つ「人」であるとし、情緒的、精神的価値といった無形の価値をどう作るかを模索。社内外からの自分への評価を気にするのではなく、企業にとって真に必要な改革をすることが自らの使命であると公言し、行動しています。
価値を生み出す「人」を育てる
事業再生に着手するとき、まず手をつけるのは財務を分析して現状を把握すること。そのうえで自社の課題を明らかにして、それを解消するための計画を作成することです。必要であれば事業再生計画書を作成してリスケの手続きもしなければなりませんし、売上アップやコスト削減といった取り組みを速やかに開始しなければなりません。
こうした計画書の作成やリスケの手続きなども重要なことですが、事業を再生に導くのにもっとも重要なのは、経営陣や従業員といった「人」です。課題を克服して売上をアップするために実際に行動するのは人。コスト削減といった改善目標を実現するのも人。いくら立派な計画が出来上がっても、人が変わり、動かないのでは事業の再生は成りません。
前述の原田氏のお話にもあるように、事業再生のカギは「人」にあります。組織の情緒的、精神的な価値を高め、従業員の能力を最大限に引き出す環境を整備すること。そうすることではじめて失敗から学び、再生へと進んでいくことができます。そうした取り組みこそが経営者に求められる改革なのではないでしょうか。
全社をあげて再生に取り掛かるためにまず必要なのは自社の置かれた状況を周知し、情報を共有すること。問題点を解決するために自ら考え、行動する従業員を育てることが必要になります。社員のモチベーションを高めるために必要な手を打つこと。やる気をなくすような要因があれば、それを解明して取り除くことも必要です。
対症療法的な倒産回避策で資金繰りが安定したとしても、組織が変わらなければ再び同じ問題に直面する恐れがあります。人が変わってこそ組織の変革は成ります。事業の再生を目指すのであれば、実現可能なプランと組織と人の変革が必要なのです。