行動目標の管理手法
2015年秋、日本では旭化成建材の杭打ちデータ不正流用の問題が大きな社会不安となっていました。近年はこのほかにも東芝による不正経理や東洋ゴム工業による免震ゴム性能擬装などの問題発覚がつづき、その原因究明はまだはじまったばかり。さらに世界屈指の自動車メーカーであるVolkswagen社による排ガス不正が発覚するという事態には、世界中で動揺が広がっています。
同様の報道でとくに印象に残っているのは、旭化成建材の親会社である旭化成の役員が今回の不祥事について会見に臨んだときの言葉。不正を行ったとされる現場管理者について、「ルーズな人だと感じた」と発言していることです。従業員の「ルーズな性格」が不正へとつながったのだとすれば、それは企業の人事管理に問題があったとしか言えないのではないでしょうか。
重要性が叫ばれて久しい企業のコンプライアンス対策や人事管理という課題について、それまでの取り組みをすべて無に帰してしまう事態を招く原因は何なのか?いまいちど考えてみたいものです。
行動目標5W2Hとその管理
企業の業績アップのためには、社員の知恵とパワーをどれだけ引き出せるかが重要な鍵となります。社員それぞれに行動目標を立てさせ、ひとりひとりのモチベーションを上げること。そしてそれを有効に管理すること。それが企業としての目標をクリアするため、また組織を活性化させて不正などの問題を排除するためには不可決なのです。
社員にモチベーションアップへとつながるような行動目標を立てさせるには、あくまでも自主性が重要となります。上から目標を押し付け、それを厳しくチェックするのでは逆効果。自主性が損なわれ、モチベーションも低下してしまうでしょう。
行動目標を立てる際に参考にしていただきたいのは、5W2Hという手法です。5Wとは、「Why=なぜ」、「What=何を」、「When=いつまでに」、「Who=誰が」、「Where=どこで」ということ。2Hとは、「How to=どのように」、「How much=いくらで」ということです。
5W2Hにならい、「何故」、「何が」、「いつまで」、「誰が」、「どこで」必要なのかと考えてみることで、より具体性のある行動目標を設定することができます。さらに「どのような方法で」、「いくらくらいの予算で」と詰めていけば、自ずと今後とるべき行動が明らかとなってきます。
行動目標を設定したら、それを管理することも重要。社員のモチベーションを低下させることなく有効な目標管理を行うには、次の2点が重要となります。
まずは重要なのは日報の作成とその共有です。日報を書くことでセルフチェックすることができ、目標達成への進捗状況を自ら掌握することができます。さらにそれを上司と共有すれば有効なアドバイスを行うこともできます。自分で立てた目標を自らチェックするということが、社員に「考える力」をつけさせる訓練にもなります。
つぎに重要なのは定期的な面談を行うこと。同じ部署のメンバーや上司と定期的な面談を持つことで戦略的な話し合いを持つことができますし、ときには目標の見直しをはかることもできます。
自主的な行動目標とそれを達成するための有効な管理が揃えば、社員ひとりひとりに自覚が生まれ、組織は活性化するものです。活きた組織には自浄作用が働くもの。不正の魔の手によって皆の努力が無に帰すような残念な結果にはならないと思うのです。