マーケティングの投資と配分
NHKの大河ドラマ『軍師官兵衛』で主役として注目を集めることになった黒田官兵衛。豊富秀吉に側近として仕え、調略や交渉術にその能力を如何なく発揮したことで有名な名参謀と称される人物です。
いまその黒田官兵衛に学ぼうと、さまざまな経営指南本が出版されています。なかでも話題となっているのが、『黒田官兵衛に学ぶ経営戦略の奥義”戦わずして勝つ”』という本。信長、秀吉、家康という戦国の三英傑に重用された天才軍師がもしも会社のマネージャーだったら、という視点で描かれたビジネス戦略本となっています。
経営者であれば、「自分にも官兵衛のような参謀がいてくれたら・・・」という気持ちになった経験はあるかと思います。官兵衛であればきっと、マーケティング投資配分の最適化にも存分に力を発揮したことでしょう。
事業領域設定とマーケティング投資配分の最適化
一般的に経営戦略を立案するうえで重要とされるのは、「事業ドメイン(事業領域)の設定」「資源配分の適正化」「競争優位性の構築」「シナジー効果の展開」といった4つの要素となっています。
事業ドメインというのは、どのような領域でどのような商品やサービスを提供するのかという事業領域を設定すること。資源配分というのは、経営資源をどのように配分するかということ。競争優位は競争相手に打ち勝つ独自性をどう築くかということ。シナジーとは事業相互にどのような相乗効果をあげられるかということになります。
なかでも事業領域の設定は経営の根幹になるもの。1960年に発表した『マーケティング近視眼』のなかで、ハーバード・ビジネス・スクールのセオドア・レッド教授は「製品よりも市場に基づいて事業領域を設定することが優れている」と主張しています。企業は市場の「現在とこれから」を見据えた適正な事業領域を設定することで、はじめて市場に働きかける企画力・提案力・実行力が試されることになるのです。
資源配分の適正化においては、コスト削減をも視野に入れた経費の最適化や組織の再構築、人材の活性化、マーケティング投資配分の最適化などといった取り組みが求められますが、こうした取り組みはすべて適正な事業領域を設定したうえで成り立つもの。とくにマーケティングの投資と配分を最適化するには、事業を通じて「誰に」、「如何に」、「何を」提供するのかということが大切になります。
ではいま企業を経営する者として、近年、およびこれからの市場の混乱ぶりを見据えたうえで何を優先すべきなのか。それにはまず、自社の経営状態を見直すことが重要。そのうえで事業領域の再設定と資源の投資・配分やマーケティングの最適化戦略を立案する必要があるのではないでしょうか。軍師官兵衛が数々の危機を乗り越えたように、我々も平成の戦国の世の生き残りをかけて勇敢に戦いたいものです。