業界地位と競争戦略
競争力を強化し、新たな成長戦略を立案するためには、現状における自社の業界地位について分析する必要があります。こうした分析を経ずに、価格競争のような消耗戦を繰り返すのは自殺行為。市場における相対的な自社ポジションを把握したうえで、そのポジションと時宜にかなったマーケティング戦略を立案することが重要なのです。
競争地位戦略論を活用
自社の業界地位を分析し、新たなマーケティング戦略を立案するうえで役に立つのは、アメリカの経営学者フィリップ・コトラーが提唱した競争地位戦略理論。コトラーは近代マーケティングの父とも呼ばれ、このほかにも数々のマーケティング理論を生みだした人物として有名です。
競争地位戦略というのは、量的経営資源と質的経営資源から、業界内の競争上の地位を4つに類型化し、それぞれのポジションに応じた戦略目標を提示する理論です。
競争地位戦略論では、企業の業界地位をつぎの4つに分類しています。「リーダー」は、経営資源が質、量ともに充実し、業界内のマーケットシェアトップとなっている企業を指します。「チャレンジャー」は、質的にはリーダーに劣るものの、量的には業界上位のシェアをもつ企業。「ニッチャー」は、規模は小さいものの、特定の市場におけるシェアを獲得している企業。「フォロワー」は、チャレンジャーのような業界上位でなく、またニッチャーのような特定市場をもつわけでもない企業です。自社の業界地位が以上4つポジションのうち、どれに相当するのかを分析することで、つぎのような戦略目標が明らかとなります。
リーダーポジションにおける戦略目標は、その充実した経営資源を活かして、市場の拡大をはかることとなります。またライバル企業の商品を取り込み、同質化をはかることでシェアトップを維持することも重要。市場全体の利益が低下しないよう非価格対応をすることも迫られます。リーダーの成長戦略は全方位(フルライン)戦略となります。
チャレンジャーポジションにおける戦略目標は、業界内におけるシェアの拡大です。リーダーが強化していないエリアや製品分野に進出するなどといった差別化戦略となります。
ニッチャーポジションにおける戦略目標は、リーダーやチャレンジャーが参入しないセグメントを発見し、創造するなどして、特定市場における独占的地位を確立するニッチ戦略となります。
フォロワーポジションにおける戦略目標は、市場上位の企業を模倣することで経営資源の不足を補い、合理化をはかる模倣追随戦略となります。
競争地位戦略論においては、それぞれのポジションにおける戦略目標が明確に提示されています。こうしたマーケット戦略を取り込むことで、価格競争などの消耗戦によって、企業だけでなく市場全体までもが疲弊してしまうことを防ぎ、よりポジティブに企業活動を営むことができるのです。