原価管理と固定費

#会計#経営管理部門

2016年4月から実施された電力の完全自由化。これまでのように地域ごとに電力会社が決められるのではなく、異業種からの参入を促すことで競争を活発化させ、電気料金の抑制を図ることを目的としてスタートしたこの自由化策。じつは2000年3月から段階的に始められているのですが、2016年度からは低圧部門も含めた全面自由化が開始となりました。

これまで電力料金というのは「総括原価方式」という方法で決められてきました。これはコストを積み上げたうえに利益を上乗せして料金を設定するというもの。こんな方法が認められてきたのは、電力事業が安定した供給が求められる公共性の高いサービスであるがゆえ。

経営者の方なら誰しも、「総括原価方式がわが社にも適用されれば、どんなに経営が楽になるか!」と思うはず。でもこれからはたとえ電力事業であっても、このような方式が通用しなくなる時代。電気ですら消費者がサービスや価格をもとに選ぶ時代となるのです。

原価を知るには固定費を知ろう

企業を経営するうえで原価を把握することはとても重要なこと。いうまでもなく原価を正確に把握しておかなくては、利益を計上することができないからです。

原価を把握することが重要なのは、それが利益アップに密接に関わるものだから。たとえ売上が上がっても必ず利益がアップするとは限りません。そこには原価という存在があり、原価というのは必ずしも売上と連動しているとは限らないから。売上を上げると同時に原価を削減してこそ、利益アップへとつなげることができるのです。

まずは原価を正確に把握し、管理することが必要です。そのためには目的に応じた分類法を知ることから始めましょう。原価の分類法には以下の3種類が上げられます。

  1. 形態別分類:「材料費」、「労務費」、「経費」という3つの形態(3大原価要素)別に分類する方法
  2. 製品との関連による分類:製品について直接関わる費用と間接的にかかる費用に分類する方法
  3. 操業度による分類:操業度に連動して変動する「変動費」と連動しない「固定費」に分類する方法

目的別にこのような分類法を活用して原価を把握することで、その削減と利益アップへの取り組みの根拠とすることができます。

利益アップのために原価を削減しようとするとき、問題になるのはおもに固定費の存在です。なぜなら固定費は製品に直接課すことができず、配賦するしか方法がないため。さらに固定費は操業度にも売上にも連動せず、場合によってはいたずらに利益を削ってしまいかねない存在だからです。

企業はその活動が大きくなればなるほど、原価の固定費化が進みます。減価償却費や維持費が増加し、直接労務費の固定化も進んでいきます。そのためさらに原価削減が難しくなっていくのです。

固定費を削減するために労務費を変動費化するといった戦略は、もはや社会的に認められるものではありません。そのような時勢にあるからこそ、今後はさらに詳細な原価管理が必要となります。原価を詳細に管理することで、「固定費の余剰はどこに発生しているのか」、また「ではそれをどこに活かせばいいのか」といった、前向きかつ実践的な戦略を立てることができるのです。

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