新規事業と組織運営
『人事のプロが教える 働かないオジサンになる人、ならない人』という本が話題を呼んだことについてご紹介します。この本はベストセラー『人事部は見ている。』の著者である楠木新氏が書いたもの。人事のプロの目による働かないオジサン像やその共通点、原因分析などが紹介されています。ビジネスマンなら誰しも陥る恐れのある「働かないオジサン」状態を避けるためにも、企業経営者や人事担当者だけでなく、すべての働くヒトに読んでいただいたい1冊となっています。
「働かないオジサン」がいるというのは問題外ではありますが、新規事業を立ち上げた際に難しいのが組織運営の在り方。いくら有効なビジネスモデルを組み立てても、組織運営が正しくなされていなければ事業を成功に導くことはできません。そこで今回は新規事業の組織運営の在り方についてご紹介したいと思います。
新たな事業の組織運営の在り方
多くの企業が誤りがちなのは、新規に立ち上げたばかりの事業を担当する部署と他の事業部との扱いを同じにしてしまうこと。実績の評価や人事評価においても同じ査定基準を採用してしまう企業は多いようなのです。
しかし経営者にとって重要なのは、新規事業と他の既存事業とがまったく別の業務であることを認識すること。立案したばかりのビジネスモデルを実行に移し、経営資源を調達し、成果をみて、さらに事業計画をブラッシュアップしていく必要のある新規事業。こうした業務を行っている部署で既存の評価基準を適用するわけにはいきません。新規事業を担当する部署で正しい組織運営を行うためには、社内特区ともいうべき新規事業用の評価基準を設けるべきなのです。
こうした特区を設けることで問題となるのは、他の部署に不満や不公平感が生まれてしまうこと。しかしこれは新たな事業を立ち上げる際に当然起きるリスクのひとつに過ぎません。こうした組織内ストレスを恐れず、新規事業を推進できるかどうかは経営者の判断にかかっています。経営者自らが率先して「社を挙げて本気で取り組むのだ!」という姿勢をアピールし、新規事業を成功に導くために正しい組織運営を行うことが重要なのです。
さきに挙げた『働かないオジサン』という本では、近年増えつつある社内フリーエージェント制度や職務公募制度を採用している企業についても紹介されています。職務公募制度とは新規事業や発展市場への職務を社員に示して、社員が直接志願できる制度。このような制度を採用することで新規事業の組織運営を円滑にし、人材の活用に役立てることもできるかもしれませんね。