社員の考える力と環境の重要性
平成26年度の都内の企業倒産件数は6年連続で減少し、1,767件となりました。建設業や製造業などで前年度を下回り、公共事業の伸びなどがその理由とされています。一方で円安による倒産件数は前年度の3倍以上という結果に。とくに原材料を輸入に頼る業界ではコスト削減に苦戦しているようです。
今後の見通しとしては、2020年の東京オリンピックへの期待感はあるものの、資材高や人手不足などの懸念も聞かれます。とくに人手不足は深刻で、とくに中小企業の新規採用は厳しいものとなりそうです。
社員を育てて人材活用
今年は例年より遅く就職活動がスタートしましたが、早速、会社説明会を開催して新規採用に動いている企業は多いと思います。ちなみに2016年3月卒業予定の学生に「就職活動の中心としている企業規模」を尋ねたところ、「業界トップの企業」が18.8%、「大手企業」が32.1%となり、いわゆる「大手狙い」の学生が過半数となっているそうです。こうした現状をみるに、人手不足に悩む中小企業は今後ますます増えそうな気がします。
採用活動に励み、新たな人材に希望を託したいという気持ちは理解できます。でもいま一度考えていただきたいのは、いまいる社員を本当の意味で活用できているのかどうかということ。
経営者の方からよく耳にするのは「社員に危機感が足りない」とか、「会議で発言できる社員がいない」といった、社員に対する不満の声。自分で考える力を持った社員がいないという悩みをお持ちの方は多いようです。
では何故、社員に考える力がないのでしょうか?それは例えば、経営者がワンマンすぎて自分の考えを述べる機会がないとか、仕事が単調すぎるとか、考える仕組みが社内にないといったことが原因なのかもしれません。会社が社員から考える力を奪ってしまっているのかもしれないのです。
会社の大事な資産である人材を本当の意味で活用するには、社員が自ら考えて行動できる力を育てることが重要です。そのために必要なのは、社員に「あなたの意見は?」とか、「なぜ?」といった質問を投げかけ、考えさせることです。
そしてさらに大切なのは、経営者が社員の意見を聞く姿勢を身につけること。どんなに忙しくでも時間を惜しまず、社員とともに考える姿勢を経営者が持てば、おのずと社員にも考える力が備わってくるのです。
大野耐一氏の著書『トヨタ生産方式』には、トヨタ自動車の「なぜ?」を5回繰り返すという伝統が紹介されています。1つの事象に対して5回の「なぜ」をぶつけること。難しいことではありますが、このように「なぜ」を繰り返すことで社員の論理的思考力や問題解決能力を鍛えることができるのです。
考える社員を育てて、その能力を輝かせるのは、経営者の使命です。人手不足を嘆くまえに、ともに考える環境作りを始めてはいかがでしょうか。