(2) 流通販路の視点で考える
① 販路、流通経路を変える
販路、流通経路、つまりチャネルの見直しは、売上拡大戦略の中でも重要な戦略の一つといえます。特に今までは順調に売上を伸ばしてきたけれども、売上が伸び悩んできた、もしくは減少してきた場合、多くの企業で「営業戦略」の見直し、特に営業部門の活性化や営業力強化に視点がいきがちです。
特に大企業の参入や、市場の成熟によるトップ企業の優位性が高まってきた場合において、中小企業は「営業力強化やマーケティングの見直しなどによる改善」ではなく、「販路、流通経路の見直しによるイノベーション」を行うことを、検討及び実行に移すことにより、売上拡大につながるケースが多く見られます。
② 某生命保険代理店の事例
<弊社へのコンサル委託の背景>
個人向けの生命保険は日本型生命保険の女性営業マンが会社にお昼休みなどに出入りし、お付き合いで生命保険に加入するというスタイル(職域)から、インターネット保険やショッピングセンターなどに多く見られる「保険見直しショップ」と呼ばれる来店型ショップなどを通じて加入するスタイルに変化してきております。
その中で弊社のクライアントである某生命保険代理店も「来店型ショップ」を最大5店舗運営し、売上も順調に拡大してきておりました。店舗近隣エリアに新聞折込チラシを入れることで集客も順調に増え、顧客の立場に立った新設丁寧な保険の説明もあり、順調に保険加入者数、売上共に推移しておりました。

しかし、ある時期から保険加入者数、売上共に下降線をたどりはじめ営業赤字に転落し、売上拡大のために、営業の抜本的な改善を図る必要が出てきたため、営業マンのスキル向上や組織の見直しなどを図りましたが、大きな成果を得ることができませんでした。
<弊社コンサルティングの内容>
弊社においてクライアント企業の社長をはじめとした経営陣及び営業マネジメントチーム、営業担当者、営業事務担当者などにヒアリングを実施すると共に、保険業界についての調査や各種データを分析したうえで、「販売チャネルの切替」という方針を提案いたしました。
「販売チャネルの切替」は具体的にいうと「来店型ショップをやめること」であり新しい販売チャネルを構築することになります。具体的には「来店型ショップ」に替わり、新たなチャネルとして「地域コミュニティー(※)」を構築することを提案、実行に移しました。
保険業界は昔から今でも「紹介」が新規顧客開拓に最も有効な手法であり、優秀な生命保険の営業マンは保険に加入したお客さんの紹介だけで優秀な成績を収めております。この紹介という「口コミ」に目をつけ、「顧客の口コミ・紹介をコミュニティーとしてネットワーク化」することで、販売チャネルを再構築し、1年以内に営業赤字から黒字転換を実現することができました。

※地域コミュニティーの概要
- コミュニティーの会員数:600名(会費無料)
- コミュニティー活動
主婦(子育て支援)の会、マネーセミナー、趣味の会 - コミュニティーの特徴
保険紹介は二次的な取組とし、地域コミュニティー会員が積極的に集う「場」と「仕掛け」を設定