原価計算の精度

#会計#経営管理部門

2015年秋。天候不順による不作が懸念される農業の世界ではじまった、新たな取り組みが注目を集めました。神奈川県藤沢市のJAさがみでは、市場相場に左右されてきた出荷額を、農家自身が生産コストをもとに決める取り組みを行ったそうです。

この新方式の導入にあたってJAでは、作業時間管理やコスト計算の手法を農家に指導。この取り組みによって、農家が自らの農作業の効率を振り返ることで経営感覚が磨かれるという効果も期待されているそうです。

計算時間短縮で精度アップ

コスト意識を高めることには、経営への意識を変革し、業務改善へとつなげる効果があります。このように原価を計算することにはさまざまな効果があり、目的があります。ここであらためて「原価計算基準」に定められた原価計算の5つの目的を振り返ってみましょう。

  1. 財務諸表作成
    財務状態を財務諸表に表示するために必要な真実の原価を集計すること。
  2. 価格設定
    価格計算に必要な原価資料を提出すること。
  3. 原価低減
    経営管理者に対して原価管理に必要な原価資料を提出すること。
  4. 予算編成
    予算の編成ならびに予算統制のために必要な原価資料を提出すること。
  5. 経営意思決定
    経営の基本計画を策定するために必要な原価情報を提出すること。

昭和37年に公表されたこの「原価計算基準」を基本としつつも、経済環境の変化などによって現在では原価計算により多くのことが要求されるようになっています。

たとえば、2006年から試行されている「J-SOX」や国際会計基準(IFRS)といった新たな会計基準への対応。多品種、少量生産型への生産形態のシフト。資材の輸入や製品輸出、海外工場の設立、海外への外注などといった商圏のグローバル化など。こうした経済環境の変化に対応して的確な経営判断を下すには、より精度の高い原価資料が必要となるのです。

原価計算の精度向上という要求に加えて、決算短信の45日開示が制定されてからはさらに計算時間の短縮も重要な課題となっています。上場企業でなくとも、精度向上のためには計算時間短縮への取り組みが欠かせないものとなります。そこでここでは原価計算の時間を短縮するための費用計算ごとのポイントをご紹介します。

  • 材料費
    材料費の計算を短縮するには、棚卸し計上ではなく、払い出し記録によるリアルタイムの計上が必要となります。また材料費を計上する際には購入先からの請求を待たず、自社の検収ベースで計上します。材料費の単価は平均法ではなく、標準単価を用いることが重要です。
  • 労務費
    給与システムを構築する際には、原価計算基幹に対応したシステムが必要になります。また労務費の計上は給与計算を待たず、標準賃率で計算することが重要です。
  • 外注費
    外注先からの請求を待たず、自社の検収ベースで計上します。
  • 製造間接費
    諸経費の計上を請求書ベースではなく、自社の検査・検収ベースで計上します。

このようにリアルタイムに費用計上して積み上げることで、より短い時間で原価計算を行うことができます。計算時間を短縮することができれば、より高い精度で原価資料を経営へと活かすことができるのではないでしょうか。

Contact

お問い合わせ

サービス内容や事例・実績など気になる点をお気軽にお問い合わせください。

FAQ

よくあるご質問

  • コストの無料診断を詳しく教えてください。
    コストの無料診断は、クライアント企業様と秘密保持契約を締結後、以下のいずれかの方法により分析し、削減見込額を報告させていただくものです。
    ①総勘定元帳から、各コストを項目別×発注先別×拠点別(店舗別)に分類のうえ全般的なコストについて分析
    ②削減を希望するコストの契約書・請求明細から、取引先×単価×数量を把握し、個別に削減見込額を分析
  • コンサルティング契約はどのような契約内容になるのですか?
    コンサルティング契約はクライアント企業様と当社との包括契約となります。契約内容には、フィー体系やコンサル内容の規定をしております。具体的な内容については契約書のドラフト及び別紙「コンサルティングの進め方」にてご説明させていただきます。
  • 業者や貸主との交渉など、クライアント側担当者の作業(事務)負担は?
    コスト分析から削減手法の策定及び各業者や貸主との交渉は当社主導で実施いたします。(クライアントのご担当者様には同席をお願いしております)交渉の進め方は交渉前にクライアント様にご報告させていただき、ご了解の上で交渉に着手いたします。
  • コンサルフィーの条件は?
    コンサルフィーは削減が実現できた場合のみ発生いたします。
    1年間のコスト削減額の中からフィーが発生しますので、未来永劫フィーが発生するものではありません。